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最高裁判所第三小法廷 昭和47年(あ)2262号 決定 1973年3月14日

主文

本件上告を棄却する。

理由

弁護人加藤礼敏の上告趣意のうち、判例違反をいう点は、所論引用の判例(札幌高等裁判所昭和二六年一二月一〇日判決・高裁刑集四巻一二号一六四五頁)は、本件と事案を異にし、適切ではなく、その余は、単なる法令違反の主張であつて、刑訴法四〇五条の上告理由にあたらない(なお、税関長の許可を受けず、かつ、関税を免れて輸入したけん銃および実包を買い受けて取得したという関税法違反の罪と、法定の除外事由がなく、かつ、公安委員会の許可を受けないでそのけん銃および実包を所持したという銃砲刀剣類所持等取締法違反および火薬類取締法違反の各罪とは、通常手段結果の関係にあるということはできず、牽連犯ではなく併合罪と解すべきであつて(当裁判所昭和四一年(あ)第一三五四号同四二年三月一四日第三小法廷決定・裁判集刑事一六二号八五一頁参照)、これと同趣旨の原判決の判断は、正当である。)。

よつて、刑訴法四一四条、三八六条一項三号により、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり決定する。

(坂本吉勝 関根小郷 天野武一 江里口清雄)

弁護人加藤礼敏の上告趣意

原判決はその理由一、において「税関長の許可を受けることなく、かつ関税を免れて輸入したけん銃および同実包の取得とその所持との間には犯罪の性質上通常手段結果の関係があると解されない」旨判示している。

然しながら有体動産の買い受け行為には、その動産の所持の結果を伴うのが日本国内における取引の通例であり、所持の結果を伴わない有体動産の買い受け行為は稀有の例にすぎない。このことは日本国居住者に顕著な事実である。

従つて本件けん銃の買い受け行為と所持行為との関係は、刑法第五四条後段に所謂「結果たる行為」である。

判例を見るに昭和二六年一二月一〇日の札幌高裁判例は、

「自己の麻薬中毒症状の緩和のため使用する目的で麻薬を譲り受ける行為とその麻薬の所持とは、通常手段結果の関係にある牽連犯で法律上一罪を構成する。」と判示している。

原判決は本件所持の対象物が関税を免れて輸入したものであるから、買い受け行為とその所持との間に通常手段結果の関係がない、と解せられる判示をしているが、買い受けの対象物が関税を免れて輸入したものであるか否かによつて区別すべき筋のものではないと思料する。

本件において、有体動産であるけん銃等の買い受け行為は、通常所持の結果を伴うものであるのに、原審が前記の如く判断したのは社会通念に反し、且つ前記判例の趣旨にも違反して居り、到底破棄を免れないものと思料する次第である。

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